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ぽやんとなんかしてないんだぜ日記

悲しみのひとはけ

末盛千枝子さんの「人生に大切なことはすべて絵本から教わった」という本を読みました。そのなかに、悲しみのひとはけ、という表現があり、とても美しい言葉だなと思いました。

芸術に不可欠なのは悲しみの味があるかどうか。どこかに悲しみの影、悲しみのひとはけが塗られているから、私達は心を打たれるのだ、という作者の思い。

本当にそうだなあと思う。ちびまる子ちゃんのような、ほのぼのした平和な家族の幸せの風景ばかりのように見える世界にもちゃんと悲しみのひとはけはあって、まるちゃんのお姉ちゃんが「さきこちゃん。」と名前で呼ばれるシーンが私はとても好きです。

いつもいつも誰からもお姉ちゃん、と呼ばれていて、自分でもちゃんとお姉ちゃんをやっているのですが、妹がうらめしくなり、そんなみじめな自分に嫌気がさして素直になれずしょげていると、ちゃんとお母さんが見ていて、名前を呼んでくれるのです。きらきらしたきれいな名前です。めったに呼ぶことも呼ばれることもなくなっていた、という悲しみの影の色に裏打ちされて、本当にいい名前をつけてもらったんだなあ、ということが際立つ忘れがたいシーンです。

子供の頃の悲しみは小さな世界の小さな体にぎゅっと凝縮されていて、記憶というより、身体感覚そのものです。そんな悲しみとはもう無縁に思える大きな体のお母さんにも、同じように子供時代はあって、そんな子供の気持ちに気付けなくなったことを気付いた時の、大人には大人の悲しみがある。お母さんだって、お母さんと呼ばれるようになって久しく、本当は美しい名前を持っている、そんなことに気がつく日がきっとさきこちゃんにもいつか来るんでしょうね。
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